判定:マイナス。 ナンピンとマーチンゲールを、ロット倍率・最初のロット・出金のしかたを変えた 36 通りの条件で検証しました。売買の方向をランダムに決めて 30 回ずつ試したところ、36 通りのすべてで、最終損益の中央値も平均もマイナスでした。
「いつか破綻するのは分かっている。でも、破綻する前に利益を出金しておけば、トータルではプラスになるのでは」。この記事は、その問いに数字で答えます。
確かめ方(結果を見る前に決めた条件)
市販の EA(自動売買)でよく見る形を、そのままルールにしました。
売買のしかた
- 最初の注文を出す(方向は下の「方向の決め方」)。
- 最後に入った値段から 30 pips 逆行するたびに、ロットを M 倍にして同じ方向に追加する。
- すべてのポジションの平均取得価格から 15 pips 有利になったら、全部まとめて決済する。決済したら、すぐ次を始める。
- 追加の回数に上限は置かない。証拠金が足りなければ追加せずに待つ。
口座の条件(国内業者を想定)
- 初期資金 100 万円、レバレッジの上限 25 倍。
- 証拠金維持率が 50% を下回ったら強制ロスカット。値が飛んでロスカットの値段を越えたら、その足の始値で決済する。
- 破綻(強制ロスカット、または最初の注文が出せない状態)したら、100 万円を入金し直して続ける。残高がマイナスになった分は、追加で入金したものとして数える。
変えた条件(3 × 3 × 4 = 36 通り)
| 条件 | 試した値 |
|---|---|
| ロット倍率 M | 2.0(マーチンゲール)、1.5、1.0(同じロットのナンピン) |
| 最初のロット(資金 100 万円あたり) | 1,000 通貨、3,000 通貨、10,000 通貨 |
| 出金のしかた | 出金なし/決済のたびに 100 万円を超えた分を出金/150 万円になったら出金/200 万円になったら出金 |
方向の決め方:毎回ランダムに買いか売りを決め、乱数を変えて 30 回ずつ試しました。方向を当てる上手・下手を混ぜずに、ナンピン・マーチンゲールという仕組みそのものを評価するためです。
データと計算:ドル円の 5 分足(2010 年 1 月〜2026 年 10 月、Dukascopy 社の bid と ask)。スプレッドとスワップを含めます。
最終損益 = 出金した額の合計 + 最後の残高 − 入金した額の合計
「プラスになる」と言える条件:30 回の最終損益の中央値と平均がともにプラスで、30 回のうち 20 回以上がプラス。
結果
出金なしと、決済のたびに出金した場合の結果です(30 回の中央値。単位は万円)。
| ロット倍率 | 最初のロット | 出金なし | 毎回出金 | 破綻の回数(出金なし・平均) |
|---|---|---|---|---|
| 2.0 | 1,000 | −396 | −231 | 13.7 |
| 2.0 | 3,000 | −935 | −740 | 28.4 |
| 2.0 | 10,000 | −1,590 | −968 | 46.3 |
| 1.5 | 1,000 | −308 | −288 | 12.1 |
| 1.5 | 3,000 | −835 | −551 | 24.1 |
| 1.5 | 10,000 | −1,533 | −871 | 47.1 |
| 1.0 | 1,000 | −123 | −59 | 2.0 |
| 1.0 | 3,000 | −379 | −317 | 7.1 |
| 1.0 | 10,000 | −608 | −613 | 17.3 |
- 150 万円・200 万円で出金する条件も含めた 36 通りすべてで、中央値も平均もマイナスでした。
- 30 回のうちプラスになった割合は、いちばん良い条件でも 17%(M 2.0、1,000 通貨、200 万円で出金)。基準の 3 分の 2 には遠く届きません。
- 最初の破綻は、30 回の中央値で、M 2.0 なら始めてから 3〜15 か月。同じロットのナンピン(M 1.0、1,000 通貨)でも約 4 年でした。
どの条件も基準を満たさず、判定はマイナスです。
なぜマイナスになるのか
1 回の決済で得る利益は小さく、破綻したときの損失は大きいからです。
M 2.0・最初 1,000 通貨の場合
1. 1 回目で決済できれば、利益は 15 pips × 1,000 通貨 = 約 1,500 円
2. 逆行が続くと、ロットは 1,000 → 2,000 → 4,000 → 8,000 …と倍になる
3. 30 pips × 4〜10 段(120〜300 pips)の逆行で証拠金が尽きる
4. 破綻すると、口座の約 100 万円を一度に失う
約 1,500 円の利益を何百回積み上げても、数か月〜1 年に 1 回の破綻で消えます。さらに、毎回の取引でスプレッドが確実にかかります。もともと優位性のない売買に、スプレッドの分だけ不利が上乗せされている形です。
出金やレバレッジを工夫しても変わらない
レバレッジを上げるほど悪くなる。 どのロット倍率・どの出金のしかたでも、最初のロットを 1,000 → 3,000 → 10,000 通貨と大きくするほど、損失が大きくなりました。1 回の利益は増えますが、少ない段数で証拠金が尽き、破綻の回数が増えるためです。
出金すると損失は少し減るが、プラスにはならない。 決済のたびに出金すると、多くの条件で損失が小さくなりました(M 2.0・1,000 通貨で −396 万円 → −231 万円)。口座に利益をためない分、破綻したときに失う額が 100 万円にとどまるからです。ただし破綻の回数は増え、結局マイナスです。出金で変わるのは損益のばらつき方で、期待値ではありません。
「買いだけ」ならプラスの条件もあるが
参考として、方向をランダムにせず「買いだけ」「売りだけ」でも試しました。
- 買いだけ:36 通りのうち、プラスの条件がいくつかありました(最大 +509 万円)。
- 売りだけ:36 通りすべてでマイナス。
これはナンピン・マーチンゲールの仕組みの利益ではありません。2010〜2026 年のドル円は約 91 円から約 150 円まで円安が進み、買いにはプラスのスワップも付きました。方向がたまたま当たっていた分の利益です。実際、近い条件どうしでも結果が大きく入れ替わります(M 2.0・10,000 通貨の買いだけで、出金なし −329 万円、毎回出金 +9 万円、200 万円で出金 +498 万円)。
この先も円安が続くかどうかは、誰にも分かりません。「買いだけなら勝てる」は、過去の値動きを見てから選んだ条件です。
言えること・言えないこと
言えること
- この 36 通りの条件では、ナンピン・マーチンゲールの仕組みで期待値がプラスになることはなかった。
- 出金のタイミングやレバレッジの工夫では、マイナスはプラスに変わらなかった。
言えないこと
- すべてのナンピン・マーチンゲールの設定を試したわけではありません(逆行の幅 30 pips、利確 15 pips の 1 通り)。
- すべて 2010 年 1 月に始めた 1 本の値動きでの結果です。始める時期を変えれば数字は変わります。ただし、スプレッドがある以上、期待値がマイナスという結論は変わらないと考えています。
まとめ
- ナンピン・マーチンゲールを 36 通りの条件で検証し、すべてで最終損益の中央値も平均もマイナスだった。
- 1 回の利益は小さく、破綻の損失は大きい。破綻は数か月〜数年に 1 回起きる。
- レバレッジを上げるほど悪くなる。出金を工夫しても、期待値はマイナスのまま。
- 買いだけでプラスになった条件は、円安とスワップのおかげで、仕組みの利益ではない。
資金を守る考え方は、FX の資金管理にまとめています。1 回の損失を資金の % で決めるのは、ナンピン・マーチンゲールとちょうど逆の考え方です。
過去のデータによる検証は、将来の成績を示すものではありません。