「リスクリワードは 1:2 以上にしましょう」という説明をよく見かけます。損切り 20 pips なら利確は 40 pips 以上、という考え方です。
結論から書くと、リスクリワードだけでは、勝てるかどうかは決まりません。決まるのは「何 % 勝てば損益が釣り合うか」だけです。この記事では、その計算と、ドル円の実データで確かめた結果を載せます。
リスクリワード比と、損益が釣り合う勝率
リスクリワード比は、損切り幅に対する利確幅の大きさです。
リスクリワード比 = 利確幅 ÷ 損切り幅
損切り 20 pips・利確 40 pips なら、40 ÷ 20 = 2 で「1:2」です。
このとき、何 % 勝てば損益がゼロになるかは、次の式で出せます。
損益が釣り合う勝率 = 損切り幅 ÷(損切り幅 + 利確幅)
1. 損切り 20 pips、利確 40 pips
2. 損益が釣り合う勝率 = 20 ÷(20 + 40)= 33.3%
3. 確かめ:100 回のうち 33.3 回勝つと、33.3 × 40 = 1,333 pips
4. 66.7 回負けると、66.7 × 20 = 1,333 pips
5. 差し引き 0 pips
主なリスクリワード比で並べると、次のとおりです。
| リスクリワード比 | 損切り | 利確 | 損益が釣り合う勝率 |
|---|---|---|---|
| 1:0.5 | 20 pips | 10 pips | 66.7% |
| 1:1 | 20 pips | 20 pips | 50.0% |
| 1:2 | 20 pips | 40 pips | 33.3% |
| 1:3 | 20 pips | 60 pips | 25.0% |
「1:2 なら勝率 33.3% を超えればプラス」という意味で、1:2 にすれば勝てる、という意味ではありません。
スプレッドを含めると、必要な勝率は上がる
実際の取引では、スプレッドなどのコストがかかります。コストは、負けたときの損失を増やし、勝ったときの利益を減らします。
入力例:損切り 20 pips、利確 40 pips、コスト 1 pips(スプレッドと約定のずれの合計の例)。
1. 負けたときの損失 = 20 + 1 = 21 pips
2. 勝ったときの利益 = 40 − 1 = 39 pips
3. 損益が釣り合う勝率 = 21 ÷(20 + 40)= 35.0%
コスト 1 pips で、必要な勝率は 33.3% から 35.0% に上がりました。損切りと利確の幅が狭いほど、コストの影響は大きくなります。
利確を遠くすると、勝率は下がる
ここが一番大事なところです。利確幅を広げれば、損益が釣り合う勝率は下がります。でも同時に、利確に届く前に損切りに当たる回数も増えるので、実際の勝率も下がります。
どれくらい下がるのかを、ドル円の実データで確かめました。
確かめ方
手法の検証ではなく、「方向を当てる力がまったくないとき、リスクリワードを変えると何が起きるか」を見るための確認です。条件は、結果を見る前に決めました。
- 期間:2023 年 10 月〜2026 年 9 月のドル円 5 分足(Dukascopy)
- エントリー:毎時 0 分ちょうど。同じ時刻に買いと売りの両方で入る(方向を当てない)
- 損切りは 20 pips に固定し、利確を 10/20/40/60 pips に変える
- 買いは Ask で入って Bid で決済、売りは Bid で入って Ask で決済(スプレッドを含む)
- 同じ 5 分足の中で損切りと利確の両方に届いたときは、負けとして数える
結果
| 利確 | リスクリワード比 | 実際の勝率 | 損益が釣り合う勝率 | 1 回あたりの損益 |
|---|---|---|---|---|
| 10 pips | 1:0.5 | 62.9% | 66.7% | −1.14 pips |
| 20 pips | 1:1 | 47.2% | 50.0% | −1.10 pips |
| 40 pips | 1:2 | 31.9% | 33.3% | −0.84 pips |
| 60 pips | 1:3 | 24.4% | 25.0% | −0.52 pips |
それぞれ約 37,000 回の取引です(利確 60 pips では、5 日以内に決着しなかった 16 回を除いています)。
- 利確を遠くすると、実際の勝率はほぼ「損益が釣り合う勝率」どおりに下がりました。 1:2 にしても 1:3 にしても、勝率が下がった分で相殺されます。
- どのリスクリワードでも、実際の勝率は損益が釣り合う勝率に少し届かず、すべてマイナスです。足りない分は、主にスプレッドによるものと考えられます(エントリーした毎時 0 分のスプレッドは、この期間の平均で約 1.0 pips)。
- つまり、方向を当てる力がなければ、リスクリワードをどう設定しても期待値はプラスになりません。
1 回あたりの損失は利確 60 pips のほうが小さく見えますが、この確認だけでは理由を切り分けていません。どのリスクリワードでもマイナスだった、という点は変わりません。
期待値で考える
結局のところ、見るべきなのは期待値(1 回あたりの平均の損益)です。
期待値 = 勝率 × 勝ったときの利益 − 負ける確率 × 負けたときの損失
入力例:損切り 20 pips、利確 40 pips、コスト 1 pips で、勝率が 40% だった場合。
1. 勝ったときの利益 = 40 − 1 = 39 pips
2. 負けたときの損失 = 20 + 1 = 21 pips
3. 期待値 = 0.4 × 39 − 0.6 × 21
4. = 15.6 − 12.6
5. = +3.0 pips
同じ 1:2 でも、勝率が 30% なら 0.3 × 39 − 0.7 × 21 = −3.0 pips でマイナスです。リスクリワードと勝率は、必ずセットで見ます。
自分の手法で確かめるには
その手法の勝率が、損益が釣り合う勝率を上回るかどうか。これは計算では分からず、過去のデータで検証するしかありません。
- 損切りと利確のルールを、先に決めて書き出す(あとから変えない)
- 過去のチャートで、ルールどおりに入った場合の勝ち負けを数える
- 勝率と、スプレッドを含めた損益が釣り合う勝率を比べる
ここで大事なのは、利確や損切りの幅を、結果を見ながら調整しないことです。結果に合わせて幅を変えると、過去のデータにだけ合った数字になり、これからの相場では通用しなくなります(過剰最適化)。
まとめ
- リスクリワード比で決まるのは「損益が釣り合う勝率」だけ。勝てるかどうかは決まらない。
- 1:2 なら 33.3%、1:3 なら 25% を超えればプラス。スプレッドを含めると、もう少し上がる。
- ドル円の実データでは、方向を当てない限り、利確を遠くした分だけ勝率が下がり、期待値はスプレッドの分マイナスのままだった。
- 見るべきは期待値。リスクリワードと勝率をセットで考え、勝率は過去データで確かめる。
損益が釣り合う勝率と期待値は、リスクリワード計算機で価格を入れるだけで出せます。